�V：観察結果

得られた観察結果を外�剋�(がいさくし）の形態、内�剋普iないさくし）の形態、表面に観察される乳頭の形態、各種の�剋浮ﾌ特徴の順に記す。

１．外�剋浮ﾌ形態
２．内�剋浮ﾉついて
３．乳頭について
４．各種の�剋浮ﾌ形態


１．外�剋浮ﾌ形態（表２−１、表２−２）
�@    長さ
　最も長い�剋浮ﾍN. borealis Nog. ナヨロヒラゴケ（図６−A）で、最も短い�剋浮ﾍN. nakazimae (Ihs.) Nog. モロハヒラゴケ（図９−A）で観察された。

�A   曲がり方
　長い�剋浮ﾍ中部から上部にかけて内側にカーブするものが多く、短い�剋浮ﾍほぼまっすぐに伸びるか、基部で曲がってもそのまままっすぐ伸びていた。
　例外的にN. fauriei Card. サイシュウヒラゴケ（図４−A）は長い�剋浮ﾅあっても、ほぼまっすぐに伸びていた。

�B    外�剋浮ﾌ厚さ
　ほとんどの種で中部から上部にかけて薄くなっていたが、N. nakazimae (Ihs.) Nog. モロハヒラゴケ（図８−C）のみ、全体的に厚さはあまり変わらなかった。

�C   中央線
　種によって、へこむものと盛り上がるものの違いがあった。
　N.fauriei Card. サイシュウヒラゴケ（図４−B、図４−E）は中部〜下部ではへこんだが、上部では盛り上がった。N. borealis Nog. ナヨロヒラゴケは個体により、へこむもの（図６−D）と盛り上がるもの（図６−E）があった。

�D  トラベキュラ
　全ての種で、盛り上がっていた。顕著に盛り上がるか盛り上がらないかの差であった。

�E    トラベキュラ間の幅
　全ての種において、縦幅が下部から中部にかけて広くなり、中部から上部にかけてより広くなる。
　N. humilis Mitt. ヒメヒラゴケ（図２−E）と N. yezoana Besch. エゾヒラゴケ（図３−E）の基部においては、下部よりも縦幅が狭くなっていた。

�F    外板の形態
　肥厚が目立って薄かったのは、N. borealis Nog. ナヨロヒラゴケの上部（図６−C）と、N. flexiramea Card. コメリンスゴケ（図９−B）、N. konoi Broth. ex Card. タカネメリンスゴケ（図１０−D）であった。
　肥厚が特に厚いのは、N. humilis Mitt.チャボヒラゴケ（図２−C）であった。

�G　内板の形態
　へこむ種が多かったが、N. nakazimae (Ihs.) Nog. モロハヒラゴケ（図８−F）とN. pusilla Mitt. ヒメヒラゴケだけが盛り上がった。特に、N. pusilla Mitt. ヒメヒラゴケ（図５−H）は顕著に盛り上がり、他の種にはない形態を持っていた。　
　N. borealis Nog. ナヨロヒラゴケ（図６−D）の中部から上部にかけて、外板の縦幅よりも内板の縦幅の方が小さかった。

２．内�剋浮ﾉついて（表２−４）

内�剋浮ﾍほとんどの種で、歯突起や基礎膜がないか、あってもそれらがばらばらになって、痕跡的に外�剋風�面に付着する種が多かった。
　N. yezoana Besch. エゾヒラゴケで基礎膜が残るか、痕跡的なものが多く観察されたが、例外的に三角状（図２−K）の歯突起が確認できる個体もあった。
　N. fauriei Card. サイシュウヒラゴケで線状 (図４−J)の内�剋浮ｪ観察された。
　しかし、標本点数も少ない上、観察をしたほとんどが痕跡的に残る程度であった。

3．乳頭について（表２−３、表２−４）　

 　外�剋浮ﾌ外板では、一面にでるもの、まばらにでるもの、稀にでるものなど差があるものの、ほとんどの種でヴェルカ状乳頭が確認されたが、同種であっても、まったく確認されない個体も存在した。
　N. humilis Mitt. チャボヒラゴケ（図２−C、図２−D）や、N. yezoana Besch. エゾヒラゴケ（図３−C）では、ヴェルカ状乳頭が多く確認される個体もあった。例外的に、N. flexiramea Card. コメリンスゴケ（図９−E）では、目立ってバキュラ状の乳頭が、中央線やトラベキュラにまで確認される個体があったが、標本点数も少ない上、違う個体ではヴェルカ状乳頭であった。
　外�剋蕪熹ﾂでも、N. humilis Mitt. チャボヒラゴケ（図２−F、図２−G）やN. yezoana Besch. エゾヒラゴケ（図３−I、図３−H）で、ヴェルカ状の乳頭が多く確認される個体もあったが、外板と同様に個体によって、あっても少ないものや、ほとんどつけないものなど差があった。

４．各種の�剋浮ﾌ特徴

�@ N. humilis Mitt.チャボヒラゴケ(図２）

外�剋浮ﾌ長さは中程度、ヴェルカ状乳頭を多くつける傾向がある。N. yezoana Besch. エゾヒラゴケとよく似た形態を持つが、N. humilis Mitt. チャボヒラゴケの方は内板の方が外板に比べ横幅が広いものが多く、中部や上部で外板からはみ出しているのが見られ、外板がより薄くなっていた。　

�AN. yezoana Besch. エゾヒラゴケ(図３）

　外�剋浮ﾌ長さは中程度、ヴェルカ状乳頭を多くつける傾向があるが、ほとんどつけない個体も確認された。内板が外板に比べ、厚かった。本研究で観察した日本産ヒラゴケ属�剋浮ﾌ中で、最もハイゴケ型�剋浮ﾉ近かった。

�BN. fauriei Card. サイシュウヒラゴケ(図４）

　外�剋浮ﾍ比較的長く、その上ほぼ真っ直ぐであり、線状の内�剋浮ｪ観察された。中部から下部にかけて外板が平坦で、トラベキュラが他の種と比べて顕著でなかった。トラベキュラ間の縦幅は下部で狭くなり、外板は横長になっていた。下部、中部、上部と３段階で縦幅が広くなっていた。

�CN. pusilla Mitt. ヒメヒラゴケ(図５）

外�剋浮ﾍほぼまっすぐ伸び、外に反るものもあった。内板は盛り上がり、中央部分だけ少しへこんでいるのが特徴的であった。中央線がへこみ、外板が薄かった。２つの外�剋浮ｪ別々にならず、１つの外�剋浮ﾌ様についているのも観察された。

�DN. borealis Nog. ナヨロヒラゴケ(図６）

外�剋浮ﾌ長さは長く、横から観察するとＳ字にカーブし、急に尖る。�剋賦ﾔが開いていて、胞子が出やすくなっていると思われる。外�剋浮ﾌ厚さが特に中部から上部にかけて薄くなっている。中央線やトラベキュラが、顕著に観察されるものが多い。内板の縦幅が、外板の縦幅よりも顕著に狭くなる。

�EN. muratae Nog. ホソヒラゴケ(図７）

　外�剋浮ﾍ比較的短く、ほぼ真っ直ぐに伸びる。中央線でしばしば切れ、本来１本の外�剋浮ｪ離れ、２本になっているのが観察された。トラベキュラは中央線に比べ、残っていた。外板は内板より狭くなっていた。内�剋浮ﾍ、外�剋浮ﾌ内側にべったりと張り付いているのものがほとんどであった。本研究で観察した日本産ヒラゴケ属�剋浮ﾌうち、最も退化した傾向にあった。

�FN. nakazimae (Ihs.) Nog. モロハヒラゴケ（図８）

　外�剋浮ﾍ日本産ヒラゴケ属の中で最も短く、外�剋浮ﾌ厚さは下部から上部まであまり変わらなかった。外板、内板ともにかなり薄い特徴があった。

�GN. flexiramea Card. コメリンスゴケ（図９）

　外�剋浮ﾌ外板、内板の肥厚が非常に弱く、中央線、トラベキュラ、共にはっきりと盛り上がる傾向にあった。乳頭の状態は産地によって違い、熊本県産ではバキュラ状、愛媛県産ではヴェルカ状の乳頭が、中央線やトラベキュラにまで現れた。

�HN. konoi Broth. ex Card. タカネメリンスゴケ(図１０）

　外�剋浮ﾌ肥厚が薄く、中央線、トラベキュラ、ともに盛り上がるが、N. flexiramea Card. コメリンスゴケほど顕著ではなかった。

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